お姉ちゃんの憂鬱

「こんにちは。お買いものですか?」


スーパーにいるんだから買い物以外の何物でもないことは分かっているんだけど、パッと口から出たのがそんな言葉だったのでしかたない。



「はい!今日はカレーです!」


聞いてねえよ。とは口が裂けても言えないので、偶然ですね家もカレーのようですとだけ言っておいた。


昨日の今日で地雷である母に出会ってしまうとは、なんとも運が良いと言うか悪いと言うか…。



なんとなくスーパーの中を並んで歩く。というかカレー被りをしているので、どう頑張っても同じルートをたどって食材をかごに入れて行かなければいけないのだ。

うちはみんな辛いのが好きだから辛口なんです、あらうちは中辛なんですよ、と特に中身のない会話をしながら進んでいく。山城家は辛口が主流らしいです。



「あ、あの、変な事聞いてもいいかな?」


中身のない会話も無駄ではなかったようで、過剰な低姿勢な話し方はなくなってきた。




「なんですか?」

「あの、…まどかさんの、好きな食べ物って、何ですか?」

「へ?」




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