お姉ちゃんの憂鬱
思わず声をかけたところ、思いっきり注目を浴びてしまった。
「お姉ちゃんそこは『待たれよ』が的確かと。」
「……直くん、今は黙ってようね。」
体育教師に腕を掴まれているメグがふきだしそうだよ。そんなことしたら絶対余計に怒られるでしょ。
「先生、なんで吉岡くんを連れていくんですか?」
「何だ君は。」
「吉岡くんの友人です。あの、吉岡くんは殴ってないと言っているのになぜ連れていくんですか?」
「…被害者が殴られたと訴えているのに、加害者の言い分を信じろと言うのか。」
「だから、そこがまずおかしいじゃないですか。なんで先生はあとから来たのに、誰が被害者で誰が加害者かわかるんですか?全部その人が言った言葉だけですよね?」
その人と言って剣道部の先輩を指さすと、その先輩がビクリと肩を震わせた。
「こんな大勢の目の前で騒いでいたんですから、みなさんに聞くのが一番早いと思うんですけど、違います?」
「…まぁ、そうだな。」
「じゃあ聞いてみましょう。すみません、この二人のやり取りをはじめから見ていた方はいませんか?」