お姉ちゃんの憂鬱

「最後に一個だけ質問。」


「何?」


「濡れ衣なのに反論もたいしてしなかったのは、自分に無関心なのが原因?」



「…だろうな。どうせ言ってもまた信じてもらえないなら無駄に抵抗しても疲れるだけだろ。俺が悪者になって丸く収まるんだったら『違う』って主張するより『それで納得するならどうぞ』って諦めた方が楽なんだよ。

…最近はちゃんとわかってくれてる奴らもいるってわかったしな。」




そう言ってあたしの頭をぐりぐりなでるメグはさっきチャイムが鳴る前と同じように、疲れた笑顔を見せた。




「メグは今まで損してきたんだね。」



人間やっぱり第一印象は大事だと思う。

第一印象である程度人は線引きをする。この人は自分と合うか合わないかの線引きだ。

そしてその線引きを覆すことができるのは本人の言葉や行動だけだと思う。




「あたしね、最初はさぁちゃんのことぶりっ子だと思ってたの。まどかは気の強い空気が読めない子だと思ってたし、直くんは一人ぼっちの無口な子だと思ってた。

でも今、その印象はきれいさっぱりなくなってるのさ。それってたぶん、あの子たちが見た目だけじゃわからない『自分』の部分を見せてくれたからだと思う。」



さぁちゃんはしっかり者でいざというとき頼りになる子。

片付けは壊滅的にできないけど料理が上手。自分から苦手な事にも挑んでいける強い子。



まどかは好奇心旺盛なワンパク少女。面白がってみんなの中心で周りを盛り上げてくれる。

けど不安になると余裕がなくなって強く当たってしまう繊細な子。



直くんは独特なセンスの持ち主でいつだって突拍子のない笑いをくれる。感情を表情に出さない分言葉で素直に伝えられる子。

そして周りにいるあたしたちをとても大切に思ってくれる子。





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