お姉ちゃんの憂鬱
「誠?どうしたの?」
近づいて顔を覗き込むと、真っ赤になって慌てていたその顔が、急に真剣みを帯びた。
「…あ、あのね、」
両手で握られた手は温かいを通り越してもはや熱い。
ぎゅっと力を籠められると、どうしようもなく恥ずかしくなってしまう。
「俺ね、かなちゃんのこと本当に好き。大好き」
あたしの目を見つめてそんなことを言う誠に、あたしの鼓動が早くなるのを感じる。
こんなのいつものことだろう?
いつも何も考えないでこいつは人のことを大好き大好きと言いふらすだろう?
なにをこんなに動揺してるのさあたし!
いつものように誤魔化して終わりでしょ!
「なーに改まって…」
「かなちゃん!ちゃんとこっち見て!」
目をそらした途端にぐっと近づいた誠の顔。
「ちょ、近い!バカ!」
「ダメ。今はちゃんと聞いて。誤魔化しちゃダメ」
「なに、言って…」
「俺、かなちゃんのこと、好きなんだよ。ずっとずっと好きだったの。かなちゃんは俺のこと弟くらいにしか思ってないかもしれないけど、ずっと好きだったの」
そう言い切った誠は、今まで見たことないくらい真面目な顔で、思わずあたしはつないだ手をぎゅうっと握りしめてしまった。