お姉ちゃんの憂鬱
◻︎旅は道連れ世は情け
そこからの修学旅行まで、夏休みということもありあっという間に過ぎて、今日は修学旅行初日。
初日はほとんどが移動に費やされるため活動も少ないが、みんな今日から始まる修学旅行にドキドキワクワクといった、なんだかそわそわ落ち着かないテンションだ。
そしてそれはうちの班にも言えることで。
「直江、お前はどんだけ移動を楽しむ気なんだ」
「花札まであるとかすごっ!」
「侮ってもらっては困ります。カルタももってきましたよ。遊びながらことわざを覚えられる優れものです」
「ぶはっ 無駄!」
新幹線に乗り込むなり鞄を漁りだした直くん。
そして出てくる出てくる遊び道具。
定番のトランプやUNOまではまだ許そう。
そこから、花札にことわざカルタまで出てくるから驚きだ。
「この勢いでポケモンカードとかまで出てくるかと思った」
「お姉ちゃんやりたかったですか?ごめんなさい。本当はポケモンカードのデッキも持ってこようかと思ったんですが、みんなに一からルールを説明する時間が惜しいと思ったのでやめました」
直くんがそこで踏みとどまれる人間で本当によかった。
「なので、ポケモンカードは帰ったらやりましょう。お姉ちゃんには特別に僕の最強のデッキを貸してあげましょう」
…とりあえず直くんが楽しそうなので良しとしよう。
みんなも同じような心境らしく、ただ頷くだけだった。