お姉ちゃんの憂鬱

「で、まどかも行きたいわけね」



今まで大人しくしていたまどかも、メグ同様にキラキラした目でホテルのロビーを見回している。

あたしの問いにウンウンと勢いよく頷いたまどかに、思わず笑ってしまう。


どうやらうちの班は探検大好きワンパク少年少女が3人もいるようだ。




「お前らなぁ…」

不意に後ろから聞こえた声に振り向くと、あきれた表情でカードキーを差し出す胡散臭メガネがいた。


「夕飯までは自由だけどそんなに時間あるわけじゃねぇんだからな?それにここに泊まってんのはうちの高校だけじゃねぇんだ。迷惑になんないように探検しろよ」



他のクラスメイトには配り終わったのか、うちのクラスでロビーに残っているのはあたしたちだけとなっていた。



「そこは迷惑になるから探検とかやめろって言うところじゃないですか?」


「どうせやめろって言ったって探検しに行くだろお前らなら」


「先生遅いですよ。なんで僕たちが最後なんですか」


「お前らが取りに来ねーからだよアホ。直江、探検に行くなら夕飯に間に合うように終わらせろよ。迷子になったら香奈子お姉ちゃんに電話しろ」


「そんなこと言われずともわかっています。あ、先生も後でカルタ一緒にやりますか?」


「…先生はいろいろ忙しいからな。やめておくよ。それより、探検するんじゃないのか?早くしないとあっという間に夕飯の時間になるぞ」



うまいこと話を逸らした胡散臭メガネは名に見合った胡散臭い笑顔を浮かべた。


これはあれだ「お前ら何でもいいから早く行け」と言いたいんだろう。





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