Love their
後ろにサトルの声が耳に届いたが振り返ることなく一目散に走った。


衝動を抑えることの出来る自分を探してみたが見つからない。


とにかく走って、熱い息と枯れた喉の痛みを覚えてつまずきながら立ち止まる。


呼吸すら狭く閉じそうな喉に引っかかりまともに出来ずに膝に手をつき身体を支えながら足元を見つめた。


ただ抑えることが出来なかった。


逢いたい。


此ほどまでに願ったことがあっただろうか。


かつて帰らないパパをあてもなく待ち続けていたあの頃みたいに。



渇いた口の中を制止出来ずに開けると熱い息が痛みを伴って抜けていく。


待てない自分を此ほどまでに思い知ってしまった。



一体どれだけ謝ればいいのだろう。


これから幾つの嘘を重ねなければいけないのだろう。

否応なしに嫌悪感が自分を襲う。


素直になるなんて綺麗事で並べる私は、覚悟すら出来ていなかった。


時折過ぎ行くサラリーマンが通りがてら不審な目をレイに向けていたが、そんな容易いことじゃない。




自分の気持ちを操作出来ずにこの恋をする資格なんてない。



でも、どうすることも出来ないこの気持ち。


どうしてこんなに。
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