Love their
「あがった?」


ノックと同時にリビングに繋がるドアの向こうから彼の声がした。


「あ、はい…」

「服、置いてあるの着てね、あと乾燥機使っていいから」

「あ、はい…」


開けられる訳ではないがショーツ一枚だけの素っ裸のレイは思わず身体が硬直して返事をするのがやっとだった。


慌てて棚の籠に置いてある数枚のTシャツの中から小さめのものを引っ張り出した。


袖を通すとまた同じ香りを鼻に感じた。


小さめと言えど男物の為、着ているより被っている表現が正しい。


身体のラインが分かるよりいいかな、と太股辺りまである裾を広げて思った。


何より、女物が用意してたりすれば一気にどん引きだよね。


何て有るはずないか…と心の中で呟きながらお揃いであろうショートパンツを履いた。



恥じらいと緊張が入り混じった身体には着心地が良いとはいえないが彼が使っているものなんだ、と纏わりつく生地の刺激と香りが軽い媚薬となる。


温まった身体で更に高まる鼓動を押さえながらリビングに入った。


丁度良い空調が滲む汗を飛ばしてくれた。


目の前のソファに身を任せる彼の姿を見てレイは軽く息を吸い込んだ。

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