Love their
レイは耳を反らしたくなって顔を膝の間に埋める。



『…でさ、レイに電話した?私はしてないけど…』


レイは自分の名前が声の中に出てきたのに気付き膝に埋めたまま耳を澄ました。


『…昨日と今日のこと、言わない方がいいんじゃない?まっすぐ帰ったってことにすれば…』



昨日のこと…あのまま飲んでたこと、か…。


里子からの電話によってさっきまでの混乱が薄れる替わりに「私の知らない里子」まで知ってしまったようで悲しさが込みあげてきた。


自分の知らない所で、何があろうと構わない。



だけど、うまく隠せないのなら、それ以上に残酷だ。

それに隠す必要がなかったと判断したサトルと違って里子はそれを隠そうとする。


火のない所に煙は立たない…芽が少し吹き出た目も留めないような雑草ですら摘んでしまおうって訳か…。


里子の用意周到な性格を分かっていながらも、こんな所で発揮されているとは…。


思い知らされたようでやりきれない孤独を感じる。


レイは腕で目を伏せたまま滲む涙を堪えきれずに抑えるのをやめた。



サトルはただ時間だけが過ぎるのを待っているかのようにレイを見つめて動かなかった。



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