Love their
――コンコン


ノックする音が廊下に響く。

静かな病棟。

私は病室の前に立っていた。




わざとらしい…




そう思いながらも先にサトルの会社の人達が来ていても何なので一応ノックしてみた。




――………




返事はない。
病室に耳を傾けてみるものの人の気配がしない。


静かだ。




サトルは個室らしい。
表札にはサトルだけの名前。






いない、かな?


数秒間待った後、
ゆっくりとドアを引いて中を覗いてみたが、やはりサトルは居ない。




私は中で待つことにした。


静まりかえった病室。



時折廊下から聞こえる足音に、
身を構えて待ってしまう。




ベッド脇のテーブルにはお花とお菓子の入った小さなバスケットが置かれてある。




誰か来たのかな…。




ベッドに腰掛け、手持ち無作汰を紛らわすかのように乱れたシーツを整える。





その時、視界に何かが見えた気がした。





……あれ?





たたんだ際に何かが転がりキラリと光を発している小さなもの。



私はその光る小さなものを手に取った。





ピアス…。







赤く輝くそれは、

白いシーツという舞台では一際目を引くものだった。




手に取るとコロンと傾き、
輝きはより一層眩しく見える。






それは、ルビーのピアスだった。



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