Love their
どう見ても患者でも職員でもない私に、関わりあいたくないかのように、それからまったくこちらを見ようともしなかった。



汗を拭いながら熱った身体を気遣いベンチの手すりに肘をつき支えにして少し身体をたむける。



棟の間を吹き抜ける風がレイのいる正面玄関まで到達して気持ちが良い。



熱く熱った身体に突き刺さるようにして流れる風は冬のように冷たく感じた。


汗に濡れたTシャツに触れてみる。


とても冷たい。


冷却シートに上半身を包まれたような寒さを感じ持っていた携帯の画面に灯りをともした。


時計はもう23時を回っていた。


サトルの最寄り駅からそう遠くはないこの病院に辿り着くまでかなり遠回りをして来たようだ。



普段は電車か車の生活をしているせいか一方通行の多いサトルの住む下町で不慣れな自転車によって走るまま1時間近く徘徊してしまったらしい。



レイは時間だけを確認するとさっきから少し騒がしくなった時間外入口に目をやった。



女性の3人組が何やら楽しく笑いながら入って行った。


自動ドアが開いたままの距離で今度は1人で歩く女性。


すこし間を開けてその後ろにも女性の姿。

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