Love their
「………」


彼はレイの言葉を無視してゆっくりハンドルを右に切った。




もういい。



「…降ろしてっっ」


レイの悲痛な呟きに彼はその場でブレーキをかけた。




ゆっくりと停止する車が止まるまで、本当は最後の最後まで期待した。



足元に置いていたバッグを握りながらも、


レイの手を優しく握る彼の手が離れようとした時も、


どこかで時が止まるんじゃないかって、期待した。



初めて逢った時のように。



初めて一緒に星空を眺めた時のように、




初めてキスした時のように、



初めて肌を重ねた時のように、




私を幸福の絶頂まで導いてくれた時のように、





このまま時が止まるんじゃないかって。




期待した。








私の気持ちを分かってくれている彼を諦めなかった。




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