Love their
「レイ…」


「……レイ?」


ふと後ろから呼びかけられてハッと我に帰った。



振り向くとそこには脇腹を押さえるサトルが居た。



「探したんだぜ〜もうこんな所で何してんだよ」


サトルは少し呆れた顔でレイの肩に手を置いた。


「もう帰ったの?会社の人…」


「うん、今玄関まで送っていったとこだよ」


「そう…」



レイは肩に置かれた体温に少し安堵を感じた。



同時にポケットの中のピアスの存在に気付きながらも頭の中では払拭したい気持ちでいっぱいだった。



聞きたいけど、聞けない。


逆に隠して持ったままでいることを責めてしまいそうだ。



「買って来てくれたエクレア、食べたかった?」



そんなレイの気持ちにお構いなしに聞くサトル。


「別に…」


何度も食べているからいい。


そうじゃない。



言いたいことはそんなことじゃない。



「サトル…」


「ん?何」


意を決して問いてみる。



が、言いたいことが出てこない。


「……いや、部屋に戻ろうか」


「お〜、行こ行こ」



どうしても聞けなかった。


サトルの様子は変わらなかった。
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