Love their
エレベーターで5階まで戻り病室までの長い廊下を2人で戻る。



サトルが話す他愛のない話。


あんまり聞いていなかった。


「ねぇ、名前呼んで」


レイはサトルの話を遮って呟いた。



「でさぁ、……はぁ?」



サトルの表情が歪む。



「いいから、私の名前呼んで」


「え?はぁ?一体何?」



サトルは困惑していた。


無理もない。自分が悠々と話をしている隙にいきなり名前を呼べと言われて戸惑わない訳がない。



でも、


聞けない辛さを安心で埋めたかった。



もどかしい心内を悟られたくないのもあった。



「はいはい。レイ?!」


サトルはレイの要求通り名前を呼ぶ。



そうじゃないんだ。



そうじゃない。



「、、もういい」


もう呼ばれたくなかった。


分かってよ。



どこまでも自己中だ。



でも、お願いだから。



「超意味がわかんないんですケドぉ??」


おどけて応えるサトル。



もう、いいんだ。


分かってない。


そして分かるわけない。



こんな時だけ、嘘が上手なのが無性に腹が立った。



一体、あのピアスは誰のなの?


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