Love their
その医師は立ち去った老夫婦を見届けた後、


手に持った紙に目を通しながら、こちら側に向かって歩いて来た。



レイは興味があった。



あれ程までに親身になってくれる医師。



遠目で見た限り、雰囲気からはそんなに年を重ねているように見えなかった。



一際目立つ長身。



パリっとアイロンされた皴のない白衣に身を纏うこの医師は、



どんな笑顔をおじいさんに向けたのだろう。



笑顔は人を幸せにする。



、どうしても顔だけは見たくなった。



ただそれだけなのに、


どうして資料を持つ細い指先に目が奪われるのか。



どうして揺れる白衣の裾に目が奪われるのか。



分からない。



レイは医師の一挙一動に興味を駆り立てた。



近づいてくるにつれて次第に輪郭がはっきりと分かり、


資料に目を落としたその下向き加減な表情に、



私はどうしても目を離すことが出来なかった。




< 35 / 274 >

この作品をシェア

pagetop