Love their
「じゃ、行き先変更かもな〜」


「どうぞ〜ごゆっくり」


レイは少しにやけながらまた唐揚げを摘む同僚に少しため息しながら言った。


どうせ、私が居ない時のいつものコースってキャバなんでしょ。


目の前でどんどん売れていく唐揚げを一つ摘んで、同僚を横目で見た。



彼も、これ食べてたりして…。


居酒屋の割には香草を使ってお洒落な唐揚げを堪能しながら思った。


でも、こんなとこにも来るんだ。


医師という職業柄、無縁のように思っていた場所だからこそ偶然逢えたのが余計に夢の様に感じさせた。


これは現実なんだ。


1本だけ手がつけられていないジョッキを手元に引き寄せた。


「お、飲めよ、その調子で明日からも頑張ってくれよ」


ジョッキを引き寄せたものの、飲むか飲まないか躊躇していたレイを見かねて向かいに座る上司が手でジェスチャーしながら煽った。


レイは少し微笑んで目を合わせた後言われた通りにビールを煽った。


冷たさが舌でクッションとなり程良く体温と調和しながら喉に流れ込む。



頭の片隅にあったサトルの存在を一緒に流し込むように、

レイはジョッキを手放すことなく残りを口に入れた。


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