Love their
ビクン…と耳に触れたかと思うと瞬時に私を引き寄せ彼の大きな胸に頭ごともたがる。


ほんとにどうにかしてしまってる。



一瞬、頭をよぎった疑問は彼の広い胸で覆いつくされた。



私たちはそのまま動かなかった。


レイは空気の匂いを少しだけ取り込みながら大きく息をした。



背中に受ける冷たい夜風が彼の手で放散して、


全くといっていい位に感じなかった。



「少し、歩こうか…」


「はい…」


初めて彼が崩した言葉。





促されて、手を取り合った。




繋いだ手の感触を何度も何度も確かめるように握り直した。



言葉にならなくて、もう言葉なんていらないと思った。





その度に力強く握り返してくれる彼。





レイは応えるように全ての身を任せるように歩幅を合わせた。




「今日、逢えた時…」



ポツリと彼が呟く。



車の列が規則正しく止まり信号が丁度、青を指す。



一度足を止めかけた二人はまた歩き出す。



レイは黙って彼の言葉を聞いていた。



「偶然を疑ったよ」


「………。」
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