Love their
「君を待っている自分を、良かったと思った」



彼は真っ直ぐ前を見て呟いた。



通り過ぎる人の波にレイが拐われないように、



かばっては少し前を歩いて引っ張ってくれていた。



レイはあまりにもストレートな彼の言葉に返す言葉を探すが、見つからなかった。


「ただ、逢いたかったんだ」


心を読むように語りかけてくれる彼の言葉に、



レイは手を握り返して頷くしか出来なかった。



同じ思いだけど、私…。



「迷惑だったらちゃんと言って」



繋ぐ手を強く握り返しながら彼が私に問う。



迷惑、だなんて。



そんな風に思ったこと、ない。



ただ、私は貴方の患者の…。



心の中の彼への答えを言葉にする前に伝わっているのかどうか、



分からないけれど。



レイが言葉にしようとする度に彼が繋ぐ手を力強くリードする。



それに応えてついて行く。



そう、言葉は多く要らない。



反対側の手を繋いだ手にそっと重ねる。



重ねたレイの指先を1つ取り込むように繋いだ手に絡めて強く握る彼。




街路樹が大きく揺れる歩道で、私たちはその後言葉を交わすことなく歩いた
< 70 / 274 >

この作品をシェア

pagetop