Love their
「ここは…」


「そうだよ。僕の病院だよ」


30分程歩いただろうか。
レイはどこをどう歩いたのかあまり記憶になかったが気付いたら病院の前に居た。


「行こうか」


「え?入っていいの」


彼は繋いだ手を引いたまま、薄暗い裏の職員入口の暗証ボタンを手慣れた操作で押し、ドアを開けた。



「僕の職場、だからね」


「一緒に入っていいのかなぁ…」


「いいよ、そんなの」


さぁ、と促されて彼に続いて入って行く。


薄暗い入口とは違って重く分厚いドアの向こうは明るい廊下が先に伸びていた。


突き当たりの左側には救急診療室があるそうで、職員か、患者だろうか、少し人の気配を感じる。


迷いなくレイの手を引いたまま歩く彼にとにかくついて行くしかなかった。


患者でもなく職員でもないレイは侵入者の気分だった。


病院って居心地いいものじゃないな…そんな事を思いながら後をついて歩く。


夜間の閉め切った院内は空気の流れが遮断され息苦しくも感じた。


「気にしないで。大丈夫だから」


「私…まずくないですか?」


「いいよ」


私の気持ちを察したのか彼が少し音量を押さえ気味に優しく言った。
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