Love their
堂々と私の手を離さずに歩く彼。


私の歩幅に合わせて歩いてくれているのが分かる。


途中、救急診療室の前を通ったが、開いたドアの向こうに明らかな気配を感じて気まずくて見れなかった。

ホントにいいのかな…。


そう思ったものの、さりげない彼の優しさが嬉しくてあまり気にならなかった。

エレベーターを待つ間お互いに無言であったが、彼は私の手を離すことなく階表示を見ていた。


8……7………6…


階表示は時折、暫く停止してまた動き出す、という人の出入りがあるのが見られた。


夜間の為、3台のうち、1台しか稼働していなかったので1階までなかなか降りて来なかった。



1階まで誰か乗ってるだろうか。


夜遅く、消灯時間も過ぎた病院に医師と明らかに不明な女が手を繋いでエレベーターを待っている姿は、誰が見てもおかしくて。


レイが思うことなんて未塵も感じさせない彼の堂々とした姿はとても頼もしくて。


不謹慎ながらも、ワクワクする自分が現れたりもした。



「今から何処に行くの?」

「診察、しよっか?」


「えっっ?いや、あの…」

「嘘、うそ。冗談だよ〜でも行き先は内緒で」




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