Love their
「もぅ、意地悪ですね」


「でも、いつでも診てあげるよ。全部ね」


「………」


繋いだ手をギュッと力強く握り直して彼が言った。


思わず顔が熱るのが分かった。


余りにもさらっと表情を変えずに言うので、恥ずかしさが倍増した。


今、顔を見られたくないな…。


「どこか診て欲しいところあれば、いつでも言ってな」


そう言って彼は私の顔を蟻が這うのを凝視するかのように覗き込んだ。


ふいに彼の顔が真っ正面に来たので思わずうつ向いてしまった。



まるで心の中を確かめるように一歩先ゆく彼の行動は

私の心を支配するかのようだった。


寸法狂いなく、包装紙で包むようにがっちりと私を覆いつくす彼に、ハマってしまった自分が分かる。




そう、みて欲しい。



貴方で覆われた私を、貴方にほどいて欲しい。




ポーンと到着音が鳴り、エレベーターの扉がゆっくりと開いた。


中には誰も乗っていなかった。


レイは内心少しほっとした。

彼といい、この場といい、心の喧騒が落ち着かない。


「さぁ、乗って」


「はい」


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