Love their
「は?何で。訳ないじゃん」


「お前が好きそうな感じだもんな〜あの先生…」


「そうでもないけど…」


レイは窓の外を眺めながらグラスに残った溶けた氷水をすすった。


サトルの目を見れなかった。


思いとは正反対のことを口にしている自分に自信がなかったからだ。


昨晩のことが頭をよぎる。

思い出すだけで掌にじわっと汗が浮かんできた。


目の前にいるサトルとの狭間で、どうしても消せない事実。


知られてはいけない。



まだ、サトルと別れる、とかどうにかする考えもない。



「ま、いいけどー」


そう言ってサトルは長くなった灰を慌てて灰皿に落とした。


灰皿ではたかれた煙草の煙がエアコンの風に乗って辺りに広がり次第に見えなくなった。


サトルは最後の一口を満足気に吸い込むと携帯を取り出して何やら画面を見ながら操作していた。


どうやら私のそっけない反応に飽きたか、何も思わなかったようだ。



レイは今だけは、彼のことを思い出さないようにとテーブルの上に散らばった灰をナプキンで拭いた。



それに…サトルと会って思い出すこと。


病院の枕元に落ちていたあのピアス。
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