深い闇の中から
 次はお腹の部分だ、内臓なんか入っていたらもうだめだ。気分が逆転しきってしまい、食事どころではないからな。今日は、ちゃんとくりぬかれているようだ。
 そして味噌汁、臭いからだめだ、鰹とか昆布の臭いに味噌の臭いが混ざり合っている、具がわかめとか豆腐とか野菜だとか、とにかくダメなものはダメなんだ。特に理由があるわけではないが、食事と言う行為にも最近は、何の魅力も感じない、むしろめんどくさい。

 とりあえず、目の前に出された食料を嫌々食べ終えた。お腹は膨れたが、気分の方は、どうしても優れない。
自分がさっきまで飯を食べていた勉強机には、嫌と言うほどの埃がかぶっていて、食料の置いてあるおぼんの下だけはぴかぴかの状態である。
病気になっても仕方ないくらいの、衛生の悪さ。考えただけでも虫唾が走る、だからそういう事は、一切考えないでいるのだが、今日は違っていた。どうしても、外の空気が吸いたくなって、窓を開けることにした。

椅子から立ち上がり、すぐ右手の太陽の光で色褪せた緑色のカーテンを開く。カーテンレールには、もちろん埃が溜っている。指ですーっとなぞれば指先が真っ黒になるほどの汚さだ。
カーテンをバッと開けると、射す光がまぶしくて思わず数分もの間目をつむっていた…
やはり、慣れない事はしないほうがいいと思った。それから徐々に光に慣れて来た頃、窓の外をじっと見つめているうちに、晴れていた空も曇り空へと変わっていった。

それでもずっと、窓の外を眺めている。
外から見た自分はどう映っているのだろうかと、普段あまり考えない事まで考えてしまう。

そして、夜がふけていった。
自分の大好きな夜だ。
数日たったある日、部屋の外から、大きな罵声と悲鳴らしき声が響いてきた。
聞き覚えのある声だ、よく聞き取れないので、扉に耳を近づけて聴いてみることにした。
「お前がいつも甘やかしてばかりいるから、あいつはいつまでたっても部屋に引きこもったままなんだ」
バチンと平手打ちの音が聴こえてきた。
「痛い…」
すすり泣く声もした。
毎日ではないが、しょっちゅう二人は喧嘩をしている、勿論自分の事でだ、
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