Love it.
──どのくらいそうしていただろう。

誰かが、あたしの髪に手を滑らせていることに気付く。

優しい手つき……気持ち良くて、なんだか安心する。



「……キレーな髪」



あれ、この言葉前にも聞いたなぁ。あたし夢見てるのかな?



「もう定時過ぎてんのに、俺のこと待ってたのか?」



そうです、あたしは当麻さんが来るのを待ってて……



「って、んなわけないか」

「──んなわけあります!」



ガバッと顔を上げたあたしは、思わずそう言ってしまった自分に自分で驚く。

見上げると、そこにはこれまた驚いたように目を見開く当麻さんが。



「びっくりした……起きてたの?」

「あ、や、今起きたというか……あたし、寝てました?」

「寝てる、と思ったけど」



なんだか意味不明な会話のやり取りをして、あたしはぼけっとした頭のまま壁に掛けられた時計を見やる。

三十分くらいしか経ってないけど、うたた寝しちゃってたみたいだ。

オフィス内を見回してみても、あたし達以外に誰もいないし……まだ会議終わってないんだ。

ということは、今あたしの頭を撫でていたのは。

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