Love it.
──心臓がわし掴みにされたみたい。

きゅうっと苦しくなって、でもその苦しさが愛しくて。
瞳にじわりと熱いモノが込み上げる。



「当、麻さん──」

「こっち来て」



極度の緊張と嬉しさで震えるあたしの手をそっと握り、椅子から立ち上がらせる彼は。

羨ましく思っていたあの優しい笑みをふっと浮かべ、後頭部に手を回して引き寄せた。

彼の胸にコツンとおでこが触れたあたしは、ここがオフィスであることも忘れ、夢のような至福に包まれて目を閉じる。



「お前の髪の匂いは媚薬みたいだな」

「ビヤク?」

「美味そうで、食べたくなる」



ぜひ食べてください!!

なんて、口では言えるはずもないので、心の中で叫びながら顔を熱くするあたし。

長いこと続けてきた片想いも、髪につけ続けた香りのおまじないも。
全部無駄じゃなかったのだと、今やっと思えた。



「当麻さん、大好き、です……」



自然とこぼれた言葉はカタコトみたいに拙かったけれど、彼はもう片方の手を腰に回してギュッと抱きしめてくれた。

しかし。あたしの髪を優しく撫でながら顔を埋める彼は、あろうことかこんな一言を口にする。



「この髪、触りたいと思ってたけど……やっぱり触るんじゃなかった」



えぇぇ!? どーゆう意味!?

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