Love it.
あたしより三歳年上で、営業を担当している当麻さん。
短大を卒業して、自動車メーカーの営業事務職に就職したあたし、折井 愛未(オリイ エミ)は、二年経った今も彼のサポート役として働いている。
爽やかな印象の黒髪の短髪に、犬のようにくりっとして綺麗な二重の瞳。
整った可愛らしい顔立ちをした彼は、先輩やおばちゃん職員によくからかわれる“いじられキャラ”であり“愛されキャラ”。
ちょっぴりツンツンしていて、態度も素っ気なくて、満面の笑みを浮かべた顔なんかもあまりお目にかかったことはなくて。
入社した当初は、ミスしたらすっごい怒られそうだなぁとか、苦手なタイプかなぁなんて思っていた。
元からあたしは消極的で人見知りするタイプだから、そんな性格も手伝って、彼と接する時はなんとなくおどおどしていたのだ。
そして、入社して一ヶ月ほど経ったある日。
契約書の作成ことで当麻さんに聞きたいことがあり、同じフロア内の営業部のデスクに向かった時のこと。
デスクの前に立ったまま、忙しなく何か作業をしている彼の背後から声を掛けたのだけれど。
「と、当麻さん! あの、中村様の契約書のことでお聞きしたいことが──」
──バンッ!と、突然当麻さんのデスクで響いた音にビクッと肩をすくめ、驚いた衝撃であたしの手から書類がバサバサと落ちた。