Love it.
返答に困っていると、当麻さんは表情を和らげたまま、

「言っとくけど、俺そんなに怒ったりすることねーよ? もっと気楽に接してよ」

と言って、あたしの強張った気持ちを解してくれた。


なんだ……当麻さん、全然怖くない。
勝手に決めつけて、苦手意識持っちゃって、あたしってほんとバカ。そして単純。

皆から“ワンコみたい”とからかわれている彼にウサギ呼ばわりされるって、なんか笑えるけどね。



「あーあ、書類落としちゃって」

「あっ、すみません!!」



屈んで書類を拾おうとしてくれる当麻さんにはっとさせられ、あたしも勢い良くしゃがみ込んだ。

その時、ゴツン!と音がしたと同時に、目の前にチカチカと星が飛ぶ。



「いったぁ~~……!!」

「こ、の石頭……!」



同じようにおでこを押さえて悶えるあたし達。

あたしが慌てていたせいで、当麻さんのおでことごっつんこしてしまったらしい。

うぎゃ~、これは本当に怒られるのでは……。



「すすすすみません!! 当麻さ──」



謝ろうとすると、突然彼がこちらに向かって手を伸ばすので、再びビクッと肩をすくめた。

そして、彼の手はあたしの頭をわしゃわしゃと撫で回す。



「わぁ! と、当麻さん!?」

「お前、ちょこまかしすぎ。やっぱりウサギだな」



不機嫌そうにそう言った彼だけれど、その顔には笑みが浮かんでいた。

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