Love it.
*恋するrabbit*
それからまた約一年。
あたしは凝りもせず当麻さんを見つめ続けている。
もちろん髪の毛の手入れも怠っていない。
早瀬さんの恋が実ったと知った時も、
その彼氏と暮らすためにこの職場を辞めることになった時も。
当麻さんが切なげな表情をすることに気付いていたから、あたしはまるでおまじないのようにあのアイテムを使っていた。
効果は……今のところナシ。
いい加減諦めろと、あたしの恋心を知っているお姉ちゃんは言ってくるけれど、二年も続けている恋だからこそやめられないのよ。
いつしか太陽が痛いほどの日差しを放つようになっていて、最近は真夏日が続いている。
いつものように、一階のショールームでお客様に出したお茶を片付けていると、また新たなお客様がやってきた。
当麻さんが担当している人だ。
あたしはその男性を席に案内し、二階のオフィスにいる当麻さんを呼びに階段を駆け上がる。
すると、ちょうど二階から降りてくる彼と鉢合わせた。
「あ、当麻さん! お客様がお待ちで──っきゃ!!」
一段上ろうとして足を滑らせたあたしは、前のめりに転びそうになり思わず叫ぶ。
段差にぶつかるのを覚悟して目をつむった、その一瞬。
「危なっ──!」
咄嗟に出たような声がすぐ頭上で聞こえ、あたしの身体は階段ではなく、逞しい胸板にしっかりと抱き留められていた。