堕ちてくる
「あのガキ、本当に関係ないのか?」
自分で出した答えに、剛田は疑問を持った。どう考えても、関係ないとは思えない。なぜなら、安原が検死している子供も、いじめをしていたうちのひとりだったからだ。

「こりゃ、酷いね。」
部屋から出て来た安原の言葉だ。日頃、いろいろな死体を見ている安原が、こんな事を言うなんて珍しい。損傷が酷さを、剛田は嫌と言うほど感じた。
「そんなに酷いのか?」
「あぁ、酷いね。なかなかこんな死体にお目にかかれるものじゃないね。見てみるかい?」
死体を見て、こんなに後悔したのは新人の時以来だ。
「な、なんだ。これ・・・。」
思わず廊下に飛び出し、何度も、何度も、深く呼吸した。剛田を追うように、安原も出て来た。
「なっ、酷いだろ?」
「あれは酷いとか、そんな生易しいものじゃない。お前、良く平気だな・・・。」
「ひどいなぁ。いくらなんでも、平気な訳ないだろう。ただ、剛田より死体を見慣れているだけだよ。」
死体を見慣れていると言うのもどうかと思ったが、剛田はその事を口にするのはやめた。代わりに、さっきまで自分が考えていた事を話し始めた。

「確かに、この間と比べて、今、この街で起きている事は常軌を逸している。それでも、隕石を操るという事を証明しない限り、その子をどうこうする事は出来ないんだ。」
「だよな。」
考えが浮かばない。この惨劇を止める術を思いつかない。少なくとも現時点では、剛田の手に負える事件ではない。その事は理解していた。理解していても、剛田の心がそれを許さなかった。
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