堕ちてくる
観察
車を静かに止めた。夜になって間もないが、彼の住む団地は静かなものだった。それでも車の音で何かを悟られるとは思えない。本来なら、そこまで慎重になる必要はないはずだった。
剛田は、彼に力がある。自分の知らない力を持っている。心のどこかで、そんな風に信じていた。だから、もしかしたら、敵を察知する能力やそんな訳のわからない能力を、まだまだ持ち合わせているかもしれない。そう考えると、無意識に慎重になっていた。
車のシートを倒し、ジッと彼の部屋を見つめる。彼が出来る唯一の事だった。
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