堕ちてくる
「大丈夫か?葉月?」
「拳ちゃん。どうして、ここが?」
「お前の携帯から、色んな騒音が聞こえたんでな。ここら辺、お前の行動範囲で繁華街と言ったらここしかない。ま、お前には不釣り合いな所だから、土地勘はないだろうがな。」
いつもなら、こんな事言われたら怒るところだ。しかし、今は何より、剛田に会えたと言う安堵感が、葉月の気持ちを包み込んでいた。剛田に抱きつき、泣いているだけだった。
肩越しに、男達が倒れているのが見えた。今まで見たものと同じように、アスファルトは血にまみれていた。
「葉月・・・。あれって・・・。」
「そう、そうなの。隕石が、あの男達に落ちてきたの。それから、教頭先生にも、教頭先生にも落ちてきたの。」
「待て、葉月。そこには、教頭先生らしき人はいないぞ。教頭先生って言うのは、どこにいるんだ?」
見回しても、倒れているのは若い男が三人だけだった。
「違うの。教頭先生は違うの・・・。」
違う場所と言いたいのだが、取り乱している葉月には、その言葉が出てこなかった。それによって、剛田はますます混乱した。
「違う?何が違うんだ?」
そう聞いても明確な答えは、いっこうに返って来ない。しかたなく、剛田は葉月を抱きしめながら、携帯を取り出し応援を呼んだ。
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