堕ちてくる
「穴?これが、体に穴をあけたって言うのか?」
「それしか考えられないね。」
安原は自信に満ちていた。しかし、剛田には信じられなかった。
「そんな馬鹿な話があるか。隕石が降ってきて人が死ぬ?そんな事が起きるって言うなら、もう何人も死んでるだろう。少なくとも、俺は聞いた事がないぞ。」
「そう言うと思ったよ。ホント、剛田の頭が固いのは、昔から変わってないね。」
一冊の雑誌が差し出された。表紙からして、いかにもオカルト好きの安原が読みそうな本だと思いながら、剛田はページをめくった。そこには、何件もの事件の事が書かれていた。
「本当だ・・・。」
自分の見識のなさを恥じた。
「ねっ、世の中って言うのは、本当に不思議な事だらけなんだよ。だから、今回は事件って事でいいんじゃないかな。死んだ彼には悪いけど、本当に運が悪かったんだね。」
何か釈然としなかった。運が悪い。本当に、そんな言葉で片づけていいのか、剛田は自問自答した。しかし、凶器は地球上にはない物で、それも宇宙からやって来たらしい。これが仮に殺人だとしても、誰が、どうやってやったのか想像も出来なかった。
「どうしたの?難しい顔しちゃって。これは事件で決まりだって。本当に、剛田は頭が固いねぇ。そんなだから、女の子にもモテないんだよ。」
「ほっとけ。」
ポケットから煙草を取り出し、おもむろに口にくわえた。
「おいおい。ここは禁煙だよ。」
「ほっとけ。」
火をつける事の出来ない煙草をくわえながら、剛田は長い廊下を歩いていった。
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