堕ちてくる
花火
朝の騒がしい登校風景があった。その中に、中島の姿があった。この中島も、坂井と同じように、いじめを行っていたひとりだ。罪の意識など、少しも持ち合わせている様子はなく、友達と楽しそうにしている。
それも今日で最期だ。
そう告げる空気を切り裂く音が、中島の体を貫通した。坂井に比べると華奢な体のせいで、それはアスファルトに深くめり込んでいた。頭と尻。その両方から、血が噴き出す姿は、さながら花火のようだった。
「うわあああああああ。」
一緒にいた工藤も、山下も叫び声をあげ、それから大粒の涙が溢れ出た。それ以外に何も出来なかった。日常にふさわしくない声を聞いて、何人かの大人達が駆けつけた。その光景は、大人達にとっても耐え難い光景だった。
「け、警察を・・・。」
ひとりの男が震える手で、携帯を取りだし、確認しながらダイヤルを押した。
「もしもし。もしもし・・・。人が、子供が死んでます。」
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