誰もしらない世界
当然、その嘘がいつまでもまかり通るほど現実は円滑に進むことはなかった。

ある日の夜、杉浦が店の店長に電話をかけていた。

杉浦(おい、最近売り上げが悪いじゃねーか。ちゃんとお前仕事してるのか?)

そんな風に杉浦は店長に問い詰める。

店長(いやー、はい。すいません。)

杉浦(女の管理きっちりしてんのか?まさかお前、商品に手だしたり、売り上げ抜いたりしてねーだろな?)

店長(それは、絶対にないです。最近数字が落ちてるのはNo.1の女の子が自身のブランドを立ち上げるとかでやめてしまったのが原因で…)

杉浦はその言葉を聞き返す。

杉浦(お前今何て言った?)

店長(いや、No.1の子がやめてしまいまして…管理しようにもどうしょうもなかったんです。というか、オーナーは聞いてると本人が言ってましたので…)

杉浦は眉間に少しシワを寄せて目を細めた。

杉浦(俺は聞いてないぞ。なにやってんだお前は。金以外信じるなといっただろう。テメー沈められたいのか?)

店長(すすす、すいません。絶対に次回はこんなミスはしませんので…!)

謝る店長の声が電話から聞こえているのに杉浦は一方的に電話を切った。

ツー…ツー…

電話を杉浦はテーブルの上に置き、ソファーに深く腰掛け一人静かに呟いた。

杉浦(面白いじゃないか。)

そう少し呟いて不気味に笑みを浮かべていた。
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