誰もしらない世界
大した会話もしていないのに、歩の目の前にその人の景色が見えていた。

何度も男性に裏切られる景色…

そして、何度も精神的に傷つけられていった…
そんな景色を歩は確かに見ていた。

歩(どうして、こんなに悲しいの…)

そう歩が呟いたと同時に夢の世界は終わりをつげ、看護婦が歩に声をかける。

看護婦(桜川さん…聞こえますか?)

はっとして歩は目を覚ました。
あんなに深い眠りについていたのに、一瞬で目が覚めた。

歩(はい、)

看護婦(四時間おつかれさまでした。)

そう看護婦は言う。
歩は短い時間のように感じていたが、四時間あまり眠っていたようだ。眠ると意外にも早く時間がたつことに驚くばかりだった。
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