誰もしらない世界
看護婦(綺麗にしあがりましたからね)

歩(楽しみ…)

そんな会話と共に歩の新しい未来は始まろうとしていた。
顔の腫れが軽くとれるまで、一週間近く病院にいた歩に、いよいよ包帯の取れる日が訪れる。

看護婦(包帯はずしますね。)

歩は目をつぶり、一体どんなふうに自分が変わったのか胸が膨らむ思いでいっぱいだった。
看護婦が鏡を歩に渡す。
歩は目を開いて自分の顔を鏡に映した。

歩(わぁ、すごい)

そこにこれまでの歩の面影はなかった。
高いスッと通った鼻筋、横から見ても前からみても美しい鼻、そしてパッチリとした大きな瞳。
窓辺から差し込む日差しがほどよくライトアップして一段と輝きを増していた。

看護婦(お美しいですよ)

歩は嬉しくてたまらなかった。
歩(すごーい、私じゃないみたい。ありがとうございます。)

看護婦(よかったですね!腫れのほうが完全に取れたらもっと綺麗になりますからね)

歩(はい!)

歩というもう一人の女の人生の幕開けの瞬間だった。
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