誰もしらない世界
その晩、いつもの自宅へ歩は帰る。
玄関を開けると、おかめと男がケラケラ笑っている。

歩(どうしたの?)

男(あ?お前も見てみろよ!)

そう言い、男は歩にケータイを見せる。
するとそこにはボコボコにされて包帯ぐるぐる巻きの女の写真があった。

歩は青ざめた。
そこには、以前男と付き合っていた女の写真が写っていた。

歩(葵さん…?)

男の商売道具であり、彼女のような存在だった葵が酷い怪我をしている。
歩も面識があるくらい仲がよかったのだ。
しかし、最近は仕事のすれ違いであまり見かけることがなくなっていた。
歩はどうしたのかと男に問いただした。

歩(ねぇ、なに?どうしたのこれ…)

男(俺がやったんだよ。ざまーみやがれ)
そう言って男がケラケラと笑う。

歩はショックの連続で黙ることさえ出来ずにとっさに問いただす。

歩(ぇぇ?!どうゆうこと!)

男(理由はひとつ。)

歩(え…)

男(約束を、守らなかった。ただそれだけだ。)

歩は恐怖で黙り混む。深く聞かなくてもなんとなく理由はわかっていた。ここをやめようとしたからに違いなかった。
以前、歩は葵に売春をやめたいと相談を受けたことがあった。しかし、斉藤がやめさせてくれないと言うことで悩んでいたのだ。
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