誰もしらない世界
それからというもの、歩の店の成績はぐんぐん上昇し、逆にれいかの成績は下降していく一方だった。
そんなれいかの気持ちなど気にもとめず、杉浦は歩にお金を入れ込む。それを目の前にするれいかにとってはこれ以上の屈辱はなかった。
杉浦という男が自分を差し置いて目の前で他の女に乗り換える様が女の美に対する執着とプライドをズタズタにするような気分に更に追い討ちをかけるからだ。
時折、れいかは歩の今住んでいるマンションの前で立ち止まり呟く。

れいか(ここも、私の城だった…なにもかもあの女のせいよ)

杉浦と別れてからはその城を出ていくしかなかったうえに、店での地位まで揺るがされる事態にれいかは到底黙ってはいられなかった。

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