社長に求愛されました
「でも、社長だって気づいてらっしゃったんでしょう? 高瀬の気持ち」
突然の告白を受けたせいでまだ耳まで赤い篤紀に、綾子がくすくすと笑いながら聞く。
「なんとなくって程度だけど。
こいつ、たまに意味の分かんねぇ事言うから、俺もよく分かんねぇんだよ」
「そうなんですか?」
「遠くなっちゃうのになんで構ってくるのかだとか……俺の事遠回しに好きみたいな事は言うのに、好きだとは絶対言わねぇし」
不満そうに顔をしかめた篤紀が、ちえりを見ながら続ける。
ちえりを起こさないように、声量に注意しながら。
「今だって、生きてても死んでも俺を不幸にするみたいな事言ってたし。
こいつが死んだら世界一不幸になる自信はあるけど、生きて傍にいてくれれば不幸になんてなりようがねぇだろ」
「社長と高瀬は、お互いの気持ちを一度交換できるといいですね。
そしたらきっと……高瀬だってこんなに悩まずにすんだのに」
ちえりが、篤紀の想いの大きさを知ればきっと。
そして、篤紀がちえりの想いの深さを知る事ができれば……きっと。
そんな風に思いながらちえりを見下ろす綾子に、篤紀が顔をしかめる。