社長に求愛されました
白石出版のレセプションパーティーが行われた翌日、綾子がちえりの部屋を訪れていた。
そして、昨日ちえりが酔った後の事を事細かに報告したわけだが。
それを聞いたちえりは、顔全部に嘘だ!と書いてあるような表情を浮かべて黙ってしまったため、綾子が釘を刺す。
「先に言っておくけど、嘘じゃないわよ。
あの時社長もいたし、高瀬の告白を聞いてた。信用できなかったら本人に聞いてみればいいじゃない」
ちえりの用意した紅茶を飲みながら言う綾子に、顔をしかめたままのちえりがようやく口を開く。
「告白って……私が弱ってるのをいい事に綾子さんが誘導尋問したんじゃないですか!」
「でも、高瀬が答えたんじゃない」
「だって聞くから! 頭ぼんやりしてたし胃痛もひどかったからついそのまま答えちゃったんです!
途中からなんかおかしいなって思ってたのに……そのまま……」
恥ずかしいというよりは、ショックに打ちひしがれている感じでちらりが肩を落とす。
それもそのハズだ。
言わないと心に決めて、それどころか離れる決意までしようとしていた矢先に綾子のこの報告なのだから。
今日はアルコールなんて一滴も飲んでいないハズなのにクラクラしている頭を、ちえりが押さえる。