社長に求愛されました
そしてそんな思いからした問いに、篤紀は迷う事なく、即座に頷いた。
そんなにも強く想い合っているふたりが、このまま立場の違いを気にして離れるなんておかしい。
綾子はあの時、プライドも意地も捨ててちえりを選んだ篤紀を見て、それを確信した。
好きだけじゃどうにもならない。
ちえりはそう言っていたけれど、そんな言葉で納得して欲しくなかったのだ。
「例え傷つく事になったとしても、一度好きになったら貫き通すべきよ。
相手の為を想って身を引くなんて、それを高瀬の歳でするなんて、そんな必要ない」
綾子の真摯な態度に、ちえりは驚きながらも黙って聞いていた。
利己的な綾子がこんな風に他人の恋愛に口を出すのは珍しい事で、それをちえりも分かっていたからこそ、驚いていた。
それまではそこまで興味がある風でもなかった綾子が、ホテルへの異動が言い渡された日からやけに関わってくるのが不思議でもあった。
「社長、言ってたわ。高瀬が死んじゃったら自分は世界一不幸になるけど、生きて隣にいてくれれば不幸になんてなるはずがないって。
私もそう思うわ」
「でも……」
「好きって気持ちだけで進んでいいのよ。
初めての恋なんでしょう?
高瀬には、相手の幸せじゃなく、自分の幸せを考えて欲しいのよ。
もっと、自分の気持ちを大事にして欲しいの」