社長に求愛されました
「昨日のパーティーではっきりと確信したんです。社長と私とでは、やっぱり違いすぎるって。
社長にはああいう場がとても似合ってて……和美さんみたいな人と一緒になるべきだって」
「和美さんみたいな人じゃなくて、和美さんみたいな立場のある人ね。
あの女は好きじゃないわ。
もしも高瀬が社長から離れても、あの女だけは寄りつかせるつもりないから」
そう呟くように言った綾子に、ちえりが困り顔で微笑む。
そして、しばらくふたりして黙った後、ちえりがそっと一通の封筒をテーブルの上に置いた。
封筒を見詰めたまま何も言わない綾子に、ちえりが苦笑いを浮かべる。
「辞表でよかったんですかね……。バイトだし職にも何にもついてないのに」
「普通は口頭なんでしょうね。でも……これでも充分伝わるから大丈夫よ。
ただ……嫌な役目ね」
「すみません……」
「昨日の夜の高瀬からの電話で内容は分かってたから、それからずっと、社長がどんな顔するかってそればかり考えてたわ」
「……すみません」
「仕事の事なら気にしないでね。今まで雑務を全部高瀬にまかせっきりだったから、ちょっと大変そうだけど……なんとかするから。
社長にもちゃんとコレ渡すわ。事務所の鍵を厳重にかけて、必要なら外に警備員立たせて、暴れ出さないようにしてからね」