社長に求愛されました
「ああ、近くにコンビニできてたし、その影響?」
つい最近まではコインランドリーがあったはずだった場所にコンビニが出来ている事に、今日ここに来る途中に気づいた。
値段的には変わらないだろうが、コンビニの方が他にも色々買えるし便利なのは確かだ。
だからコンビニの前を通りながら、何もこんなところに建てる必要ないのに、とちえりも八つ当たりをしながらここまで来たのだけれど。
「そうなのよー。迷惑よね、あれ。一ヶ月前にできたんだけど、おかげで売り上げ落ちちゃって。
厳しいわー」
「……ごめん」
洋子の発言に嫌味がこもっているわけじゃない事は、ちえりも分かっている。
それでも、こんな風にお金の話をされてしまうと、お世話になっている立場上、謝りたくなってしまうもので。
俯いて謝ったちえりに、洋子は慌てて両手を胸の前で振る。
「やだもう、いつも言ってるでしょう!? ちえりちゃんも慎一くんもそういう事は気にしないでって!
私はふたりの事はもう家族だと思ってるからついつい気兼ねしない言葉が出ちゃうのよ。
もう性格だから直らなくて」
今度はさきほどとは違うトーンでまいったわーと言う洋子に、ちえりはくすくすと笑いながら、首を振った。