社長に求愛されました
「やりたい事ないのかな。興味ある仕事とか」
「あったらもう少しましな成績残すでしょ。向上心のかけらもないし、このままだと求人に残ったブラック企業に就職する事になるんじゃないかしらね。
どうにでもなると思って呑気に構えてるところがダメなのよねぇ」
「このお店は継がないの?」
「……ちえりちゃん。私もね、このお店が大事なのよ。
歩になんか継がせられるわけないじゃない。あの子に継がせたらものの数ヶ月で潰れちゃうって断言できるわー。
これが慎一くんだったら安心して任せられるんだけど」
実の親にまでここまで言われる歩に苦笑いしか浮かべられないちえりの横で、洋子は、せめてしっかりしたお嫁さんでももらえれば……と歩に店を継がせてもいい条件を模索している。
そして、しばらくそうした後、ハタっと止まり視線をちえりに向けた。
輝いて見える瞳からそっと目を逸らしたちえりが苦笑いを浮かべる。
「……おばさん、嫌な予感しかしないんだけど」
話の流れから言って、恐らく自分の予感は間違ってはいないだろうと思いながら顔をしかめるちえりに、洋子がまぁまぁと宥めるように微笑む。