社長に求愛されました


「でも、ちえりちゃんが歩のお嫁さんになってくれたら私も安心だわー。
お店も歩も任せられるもの」
「おばさんがお義母さんなら、私もうまくやっていけそうだし嬉しいけど……でも無理」
「従兄妹なら結婚もできるんだし、ちょっとちえりちゃん本当に考えてみてくれない?
ほら、ちえりちゃん、あまり彼氏とかそういうの興味なさそうだったからその辺ずっと心配だったのよ。
もしかしたら近くで歩のダメさを見てきたから男の人がダメになっちゃたのかしらって。
その点、歩なら、どれだけダメか分かってるからこれ以上落胆する事もないし」

その点、の後もよく分からないし、その前にそんなトラウマ作った本人と結婚なんてするハズがない。
そうは思ったものの、さすがにそれを口にする事はためらわれて、他に誰もいなかったらねと曖昧に答えを濁した。

「だって、今までちえりちゃん誰もいなかったじゃない。そういう人」
「ひとりいたよ。おばさんが彼氏作れってうるさかったから、とりあえず付き合ってみた事あったもん」
「そうじゃなくて、好きな人の話よ。
私、ちえりちゃんから恋の相談されるのずっと楽しみにしてたのに、まったくないんだもの」
「そんな事言われても……」

つまらないわーという表情で言う洋子に困っていると、本当に誰もいないの?と念を押すように聞かれる。



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