社長に求愛されました


そんな風に色々考えながらも、いまいち考え事に集中できずにため息を落とす。
考え事にというよりは、篤紀から逃げ回る手段を考える事に、と言った方が正しいかもしれない。

会いたいと思う気持ちがあるからこそ、なんだか身が入らないのだ。
これから全力で逃げ回らないといけないというのに……うまく頭が切り替えられない。

現実になった篤紀との別れ。
それを目の当たりにしてしまったちえりは、いくら自分が決めて覚悟していた事とは言え、それが完全にはまだ受け入れられていないのだ。

もう会わない。
それがどれだけツラいか覚悟していたハズなのに、現実は想像なんかとは比べ物にならないほど重くのしかかり、ちえりの後悔を誘い出そうとする。

それにただ黙って耐えるように、ツラさから顔を歪めたちえりは開いたままのページを眺めて篤紀に想いを馳せていたのだが……。
そのページの特集記事に、ふいに現実に連れ戻される。

なぜその特集が気になったのか、自分でも分からなかった。
別に宝石なんて興味もないし、普段のちえりなら飛ばして読んでいる部分だ。

それなのに、なぜか強く惹きつけられてしまい、ちえりが仕方なく特集を読み始める。
“あなたの誕生石”というタイトルの記事を。


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