社長に求愛されました
その様子さえもはっきりと見えないほど、ちえりの瞳は次から次へと浮かんでくる涙に視界を奪われていた。
好き。その一言を言えたらどんなによかっただろう。
一途に想ってくれる篤紀をこんな風に裏切る事しかできない事が悔しくて仕方なかった。
仕方のない事だと割り切って、自らが出した答えだからこそ……自分しか責められない。
篤紀を傷つけてしまったという、底が見えないほどの罪悪感と、足元からじわじわと呑み込まれて拭い去る事のできない自己嫌悪。
そして何よりも、怒涛のない悲しみに覆われて、ふたりの誕生石が見えなくなり……ついには何も見えなくなった。
これしかなかったしこれでよかったのだとも思う。
それでも受け入れる事が難しい篤紀との別れの決断も、いつかは胸を張って受け入れられる時がくるのだろう。
そう自分に言い聞かすように考えたちえりだったが……。
涙の収まらない瞳をそのままに、そのいつかというのはいつなんだろうと疑問が浮かぶ。