社長に求愛されました


いつか、本当に受け入れる事なんてできるのだろうか、と。

気持ちが前を向いている時なら、すんなり受け止める事のできる言葉だが、今のちえりはそうではない。
真っ暗闇の中で、何かすがれるものを探している状態で、いつか、というのはあまりに漠然としすぎていて手を伸ばせないのだ。
手を伸ばしたところで、それは握る事もできずにシュッと姿を消してしまう。

ちえりからすれば、いつか、なんて言葉の入った希望は、ただのまやかしにしか思えなかった。
あってないような、幻みたいに。

そんな希望を持てない中に残るのは、現実と事実のみ。
篤紀を傷つけた。それを自分が望んだ。……それだけだ。

負の感情だけを集めた海に足をとられ……そのまま蟻地獄にかかった蟻のようにその中に誘い落とされる。

――もう、会えない。
受け止めきれない事実が上から襲い掛かり、ちえりの目にはもう暗闇以外何も見えなくなった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

誰もいない部屋。涙でぐしゃぐしゃになった雑誌。
ちえりのやっと絞り出したような泣き声が、奮えていた。




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