社長に求愛されました
驚きから目を見開いたちえりが、今度はそれをしかめて篤紀を信じられないとでも言った表情で見つめる。
未だ収まらない涙をこぼしながら見つめてくるちえりに、篤紀は困ったように微笑んだ。
「だって俺、おまえがいないとダメなんだ。何もできなくなる。
おまえがいなくなったら、立ち直る事なく一生を終える自信がある」
「だからって……っ」
「俺だって男だし、こんな情けない事言いたくない。
けど、おまえが心配してる事を全部取っ払えるような言葉は見つけられなかったから……。
おまえが感じてる不安をどうにかしたくて、昨日一日色々考えて動いたりしてみたけど、どれも決定的じゃねぇから。
だったらもう、不幸になるつもりでおまえに飛び込んできてもらうしかねぇなって」
そんな事を言って笑う篤紀に、言葉を失っていたちえりがハッとして口を開く。
「なんで私が飛び込むんですか! そんなの社長が飛び込めばいいのに!」
「いや、この例えの場合、俺はもうそん中にいるし。おまえが言う、不幸の中に」
「……え?」
「そん中でずっと……おまえが飛び込んできてくれるのを両手広げて待ってる。
ああ、あれだ。それこそ、ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンみたいに」
知ってるだろ、と普通のトーンで聞かれて……呆気にとられてしまう。