社長に求愛されました


「そんなん、呼吸続けてんのと同じくらい簡単だろ。逆に言えば、そうしない方が俺にとっては不自然なんだよ。
言っただろ、おまえがいないと溺れるって」

本当に当たり前だという感じで笑う篤紀に、拍子抜けしていたちえりからも笑みがこぼれる。

そして。

「私も社長がいないと生きていけないくらいに、社長が好きです」

そう言い終わるや否や、見上げる篤紀の唇に自分のそれを重ねた。
触れるだけではあるが、初めてのちえりからのキス。そして、好きという言葉。

ただただ驚いて言葉も、呼吸すら失っていた篤紀がハっとして、微笑むちえりに半分放心状態のまま言う。

「今の……もう一回」
「今の? どっちですか?」
「どっちもに決まってんだろっ」
「……嫌です」
「は……?!」

ちえりの腕をガシっと掴み、自分に引き寄せようとしていた篤紀が思いきり顔をしかめる。
篤紀からしたらこれからって時にという事らしいが、ちえりはこれ以上続けるつもりはないようだった。

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